Interview
先輩インタビュー

西水 翔子

地域のすべてを
引き受ける総合診療医の誇り

医師9年目 宮崎医院(2024年11月現在)
西水 翔子

現在のお仕事の内容を教えてください。

大分県由布市庄内町の宮崎医院で勤務しています。当院は有床診療所なので、外来に加えて病棟の業務も行っています。他にも訪問診療や健診を行っているのが、当院ならではの仕事ですね。

訪問診療は、看護師さんと一緒に個人宅や施設を週に何度か訪れて診察を行います。健診は、学校医を依頼されている小学校・高校の内科健診や、行政が行う1歳半健診・3歳児健診などです。

総合診療・総合内科に入局したキッカケは何ですか?

医学部を志したときは、患者さんの近くで安心感を提供できる、いわゆる「町医者」に憧れていました。ただ、いざ大学で勉強してみると専門性の高いことが多く、「町医者」という概念を学ぶ機会はほとんどありませんでした。

そんなときに家庭医療の勉強会があり、「私が描く医療のイメージはこれだ!」と思ったんです。その後、実際に地域医療の研修を宮崎医院で行い、自分の好きなことと得意なことが一致したという感覚を得ました。地域の人たちの健康を支える専門医になりたいと思いました。

もともと1つのことを突き詰めるより、満遍なく勉強するほうが性に合っていましたし、人と深く関わりたいとも思っていました。また、自分の家族が困ったときに相談に乗れるような仕事をしたいという想いもあったので、総合診療・総合内科を選択することにしました。

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総合診療医をもっとメジャーに

総合診療医とはどんな仕事ですか?

医療現場では、「処方する」だけが答えではないときがあります。患者さんだけでなく、家族や生活背景まで踏み込んで診るのが総合診療医です。1つの困りごとに関して、医学的な問題がなかった場合でも、福祉や介護へ橋渡しをすることができます。ケアマネジャーや行政など多方面と連携して、医療以外のところでもサポートできる地域医療のハブとなる存在です。

実際、私くらいの若い医師が診療所で働いていると、研修に来た学生さんから驚かれることがあります。こういう仕事はセカンドキャリアというイメージがあるんでしょうね。でも実際働いてみると、若手だからこそできる仕事もたくさんあります。総合病院での研修も積みましたが、病院で働いていたからと言ってできる仕事でもないと痛感しています。

総合診療医は歴史が浅く、一般的にまだ浸透していないのが実情です。だから、医学生や世間一般に向けて、総合診療医の専門性や重要性をアピールしたい。総合診療医の知名度アップは、約7年間総合診療医として働き、自信と誇りを身に付けた私の使命だと思っています。

総合診療・総合内科の魅力は何だと思いますか?

患者さんを「ずっと診られる」ことだと思います。一度つながった患者さんとは、関係が途切れず、継続的にケアすることができます。患者さんご本人と会わなくても、来院したご家族から話を聞くこともあり、同じ場所で働くことで関係が深まっていくのがとても興味深いです。

困りごとを相談されたときもうれしいですね。大きい病院に行った方がいいのか、様子を見たほうがいいのか、どういうふうに様子を見ればいいのか、知識と経験に基づいて総合的に診断し、アドバイスするのが総合診療医の仕事。「先生に相談すれば安心」「先生なら何とかしてくれる」と頼りにされる医師になりたいです。

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最後の瞬間まで寄り添うということ

辛かったこと、嬉しかったこと、
心に残っているエピソードなどを教えてください。

田舎の病院ならではのケースですが、高齢の方が多いのでお看取りすることが何度かありました。衝撃だったのは、お看取りをしたあとにご家族がお礼に来てくださることです。大きな病院では、病気を治してお礼を言われることはあっても、最期に立ち会って感謝されることはないですよね。

患者さんが亡くなるのはもちろん辛いです。しかし、希望通りの最期を迎えるまでずっとサポートできたことは意義深く、ご家族からの感謝の言葉で報われた気持ちになります。

仕事と家庭は両立しやすい環境ですか?

現在は子どもが小さいことを配慮して、時短勤務をさせてもらえているのでありがたいです。時短でも責任とやりがいのある仕事を任せてもらえ、自分の存在意義を感じられる居場所があることで毎日充実しています。

土日と退勤後のイレギュラーな対応は他の医師が担当してくださっているので、休日は家事や子どもとの時間にあてられます。
総合診療医は活躍の場が幅広いので、ライフステージによって働く場所を選べる点がいいところですね。

これから総合診療医を目指す方に向けて
メッセージをお願いします。

総合診療医を説明するときに「何にでもなれる」とよく言うのですが、まさにその通りで、働き方を明確に表現するのが難しいんです。将来像のバリエーションが本当にたくさんあるので、学生さんにとっては未来が描きづらく、選択を躊躇してしまうかもしれません。

しかし高齢化が進む現代では総合診療医の重要性が増しています。臓器別の診療を複数行っても機能しないという例は珍しくなく、情報を総合的に判断するマネジメント機能を担う総合診療医は、これから必要とされ続けるでしょう。

九州ではまだ総合診療科が多くありません。そんな中で、当科では充実した研修内容やきめ細かい指導、多数の働き場所を提供できます。
総合診療や家庭医療に興味がある方、人と関わるのが好きな方、興味を絞り切れない方は、ぜひ一度当科にお越しください。

総診医への道

  • 中学生時代

    資格を持つこと、医療分野に進むことを勧められる。

  • 高校2年生

    漠然と医学部進学を考え始める。

  • 高校3年生

    母から「こどもの受診のときに『なんでも相談してね』と医師に言われて救われた」と聞き「頼られる医師」になりたいと思う。

  • 大学2年生

    大学内の家庭医療ワークショップに初参加。
    恩師と出会う。

  • 大学4年生

    研究室配属で総合診療・総合内科学講座に配属。
    県内各地の病院・診療所見学が面白かった。

  • 医師1年目

    日々研修。どの科も楽しくて一つの科に絞りきれない。

  • 医師2年目

    地域医療研修(宮崎医院)で総合診療の道に進むことを決意。

総合診療医を目指す君へ

総合診療医を目指す君へ

総合診療医は、医師不足や高齢化が進む時代に必要不可欠な存在。病気を治すだけでなく、地域の健康と人々の人生を支える役割を担い、どの地域、どの病院からも求められる存在です。
総合診療医は幅広いキャリアの可能性があり、興味を持ったことにチャレンジできます。臓器専門医と比べて将来に不安を抱く必要は全くありません!ぜひ自信と誇りを持って、総合診療医を目指してください。